
新しいプロジェクトメンバーが入社したとき、私たちは何をするでしょうか?会社のルール、開発フロー、ベストプラクティスをまとめた「オンボーディングガイド」を渡します。この資料を読めば、新人でもチームのやり方を理解し、すぐに活躍できるようになります。
AIエージェントにも、同じことができたらどうでしょう?
Skillsは、まさにそれを実現する機能です。Google AntigravityやClaude Codeで利用可能なこの新機能を使えば、汎用的なAIエージェントを特定ドメインの専門家に変えることができます。この記事では、Skillsの概念から実践的な活用方法まで、包括的に解説します。
Skillsとは何か
起源と歴史
Skillsは、Anthropicが2025年10月に発表した革新的な概念です1。Claude Codeのために開発されたこの仕組みは、「汎用エージェントを専門エージェントに変える」というシンプルながら強力なコンセプトに基づいています。
“Building a skill for an agent is like putting together an onboarding guide for a new hire.” (エージェント向けのSkillを作ることは、新入社員向けのオンボーディングガイドを作るようなものです)1
その後、2025年12月にはオープンスタンダードとして公開され2、クロスプラットフォーム対応が実現しました。Google DeepMindが開発したAntigravityも、2025年11月の発表時からこのSkills機能をサポートしています3。
WorkflowsやMCPとの違い
AIエージェントには、すでにさまざまな拡張機能があります。Skillsとの違いを理解しておきましょう。
| 機能 | 用途 | Skillsとの違い |
|---|---|---|
| Slash Commands | /deploy stagingのような固定コマンド | 明示的に呼び出す必要がある |
| CLAUDE.md / GEMINI.md | プロジェクトの常時コンテキスト | 常にメモリに読み込まれる |
| MCP Servers | 外部ツールとの連携 | ツールを提供、Skillsは手順を提供 |
| Skills | 専門知識・ベストプラクティス | 必要なときだけ自動で読み込まれる |
Skillsの最大の特徴は、エージェントが自動的に関連性を判断して読み込む点です。ユーザーが明示的に指定しなくても、タスクに応じて適切なSkillが発動します。
SKILL.mdの構造と書き方
基本構造
Skillは、特定のフォルダ構造を持つディレクトリです。最もシンプルな形では、SKILL.mdという単一ファイルだけで構成されます4。
---name: explaining-codedescription: Explains code with visual diagrams and analogies. Use when explaining how code works, teaching about a codebase, or when the user asks "how does this work?"---
# Code Explanation Skill
## Instructions
When explaining code, always include:
1. **Start with an analogy**: Compare the code to something from everyday life2. **Draw a diagram**: Use ASCII art to show the flow, structure, or relationships3. **Walk through the code**: Explain step-by-step what happens4. **Highlight a gotcha**: What's a common mistake or misconception?
Keep explanations conversational. For complex concepts, use multiple analogies.YAMLフロントマターには、以下の2つが必須です:
name: スキルの識別子description: スキルの用途と発動条件
特にdescriptionは重要です。エージェントはこの説明文を読んで、「今のタスクにこのSkillが必要か?」を判断します。発動しないSkillは、descriptionの書き方に問題があることが多いです。
Progressive Disclosure(段階的開示)
Skillsの設計における核心的な概念が**Progressive Disclosure(段階的開示)**です1。これは、情報を必要なときに必要な分だけ読み込む仕組みです。
3つのレベル:
- Level 1: 起動時に
nameとdescriptionのみをシステムプロンプトに読み込み - Level 2: タスクに関連すると判断したら、
SKILL.md本文を読み込み - Level 3+: 必要に応じて、追加ファイル(reference.md等)を読み込み
この設計により、Skillsはトークン効率が高く、スケーラブルになります。100個のSkillがインストールされていても、実際にコンテキストに読み込まれるのは、その時点で必要な数個だけです。
ディレクトリ構造
複雑なSkillでは、複数ファイルに分割することが推奨されます1。
my-skill/├── SKILL.md (必須 - メインの指示書)├── reference.md (詳細リファレンス - 必要時に読み込み)├── examples.md (使用例 - 必要時に読み込み)└── scripts/ └── helper.py (ユーティリティスクリプト - 実行用)SKILL.md内で他ファイルを参照することで、エージェントは必要に応じてそれらを読み込みます。
## Additional Resources
- For complete API details, see [reference.md](reference.md)- For usage examples, see [examples.md](examples.md)Skillsの配置場所とスコープ
グローバルSkills
すべてのプロジェクトで使いたいSkillsは、ホームディレクトリに配置します。
| プラットフォーム | パス |
|---|---|
| Antigravity | ~/.gemini/antigravity/skills/ |
| Claude Code | ~/.claude/skills/ |
| Gemini CLI | ~/.gemini/skills/ |
例えば、どのプロジェクトでも使う「コードレビューSkill」や「Git操作Skill」をここに配置します。
ワークスペースSkills
特定のプロジェクトでのみ使うSkillsは、プロジェクトルートに配置します45。
| プラットフォーム | パス |
|---|---|
| Antigravity | .agent/skills/ |
| Claude Code | .claude/skills/ |
| Gemini CLI | .gemini/skills/ |
ワークスペースSkillsの利点:
- バージョン管理可能: Gitでチームと共有できる
- プロジェクト固有: そのプロジェクトの規約やパターンに特化
- ポータブル: リポジトリをcloneすれば同じSkillsが使える
実践的なSkill作成ガイド
開発ステップ
効果的なSkillを作るためのガイドラインを紹介します1。
1. 評価から始める
まず、エージェントの弱点を特定します。代表的なタスクを実行させ、「どこで躓くか」「どんなコンテキストが足りないか」を観察しましょう。
2. 最小限のSKILL.mdを作成
最初から完璧を目指さず、シンプルなSkillから始めます。name、description、基本的な指示だけで十分です。
3. テストと観察
「このSkillを使って〇〇して」と依頼し、エージェントの挙動を観察します。Skillが発動するか、指示に従っているかを確認します。
4. 反復改善
エージェントとの対話を通じて、Skillを改善していきます。「今のやり方をSkillに追加して」「この失敗パターンをSkillに書いて」と依頼することもできます。
具体例:コード解説Skill
以下は、コードの解説に特化したSkillの完全な例です4。
---name: explaining-codedescription: Explains code with visual diagrams and analogies. Use when explaining how code works, teaching about a codebase, or when the user asks "how does this work?"---
# Code Explanation Skill
When explaining code, always include:
1. **Start with an analogy**: Compare the code to something from everyday life2. **Draw a diagram**: Use ASCII art to show the flow3. **Walk through the code**: Explain step-by-step4. **Highlight a gotcha**: Common mistakes or misconceptions
Keep explanations conversational.このSkillがインストールされていれば、「このコードどうなってるの?」と聞くだけで、自動的にこのフォーマットで解説が返ってきます。
スクリプト連携
Skillsは、コード実行と組み合わせることで真価を発揮します1。
例えば、PDFのフォームを処理するSkillでは、Pythonスクリプトを同梱できます:
pdf-skill/├── SKILL.md├── forms.md└── scripts/ └── extract_fields.pySKILL.md内でスクリプトの使い方を指示:
## Form Processing
To extract form fields from a PDF:\`\`\`bashpython scripts/extract_fields.py input.pdf\`\`\`エージェントはこのスクリプトをコンテキストに読み込まず直接実行できます。コード実行は決定論的で高速なため、トークン消費を抑えながら確実な処理が可能になります。
セキュリティと注意点
Skillsは強力ですが、信頼できないソースからのインストールにはリスクが伴います1。
注意すべきポイント:
- バンドルされたスクリプトの内容を確認する
- 依存関係をチェックする
- 外部ネットワークへの接続指示がないか確認する
不明なソースからSkillをインストールする場合は、まずファイルの中身を監査してから使用しましょう。チームで共有されているSkillsや、公式リポジトリのSkillsを優先的に使うことをお勧めします。
まとめ
Skillsは、AIエージェントを「汎用アシスタント」から「ドメイン専門家」に変える強力な仕組みです。
今日からできること:
- まずは簡単なSkillを1つ作ってみる
- 自分のワークフローで繰り返し説明していることをSkill化する
- チームで使えるSkillsをGitリポジトリで共有する
Anthropicのエンジニアリングチームは、将来的にはエージェント自身がSkillsを作成・編集・評価できるようになることを目指しています1。AIが自らの学びをパッケージ化し、再利用可能にする—そんな未来が、もうすぐそこまで来ています。
公式ドキュメントや詳細なリファレンスは以下をご覧ください。
参考文献
Footnotes
Anthropic Engineering Blog, “Equipping agents for the real world with Agent Skills” (2025/10/16) - https://www.anthropic.com/engineering/equipping-agents-for-the-real-world-with-agent-skills ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
Agent Skills Open Standard, agentskills.io (2025/12/18) - https://agentskills.io/ ↩
Google DeepMind, Antigravity Announcement (2025/11/18) - https://blog.google/technology/google-deepmind/ ↩
Anthropic, Claude Code Skills Documentation - https://docs.anthropic.com/en/docs/claude-code/skills ↩ ↩2 ↩3
Google, Antigravity Skills Documentation - https://antigravity.google/docs/skills ↩
